ななくせ無くせ

 「なくてななくせ」という。誰でも七つぐらいはクセを持っている、という古人の教えである。

 クセというのは、いろいろ種類があるようだ。ドラえもんの中で「クセをおおげさに見せる道具」という役にたつんだか、たたないんだかよく分からない道具がでてきたことがある。そのとき、パパは貧乏ゆすり、ママは舌なめずり、のび太は鼻くそをほじるというクセがあった。他にも、鉛筆を指先でくるりとまわすクセとか、人差し指でメガネをくいっと上げるクセだとか、そういうのはよく見かける。あと、裸のうえにコートを着て、夜の公園でガバッと開けるクセだとか、電車のつり革で懸垂するクセだとか、そういうクセもたまに見かける。

 私はといえば、つい首の骨を鳴らしてしまうクセがある。あごに手を添えて、頭を横に倒すと「ゴキゴキゴキッ!」と冬眠中の熊も目覚めるほどのすごい音がなる。はじめのころは首から音が鳴るのが面白くてやっていたのだが、近頃は無意識のうちに首の骨を鳴らしてしまうようになった。

 どちらかといえば、あまり良いクセとはいえない。赤い羽根を見ると無意識に小銭を取り出してしまうとか、献血車を見ると無意識に腕まくりをするとか、そういうクセならすばらしい。しかし、「首の骨を鳴らすクセ」というのは見ていて心地よいものではない。まわりの人はぎょっとしてしまう。「骨折れてないの?」とまで聞かれる。いずれ折れるかもしれないが、今は大丈夫だ。

 「やめようやめよう」と思うのだがなかなか直らない。無意識にでてしまうので、鳴らしてしまってから自分の挙動に気づく。もう、どうにもとまらないのである。実害がないことだけが救いだ。

 しかし、もし私の職業が忍者だったらどうだろう。天井裏に忍び込んで、ふし穴から部屋の様子をうかがっているとき、ついいつものクセがでてしまう。

 天井から聞こえる「ゴキィッ!」という音。当然、下で密談をしていた越後屋は、何者かが潜んでいることに気づく。槍を手に取り天井に突き立てて一言、

 「クセ者!」

 …はやく、なおそうと思う。