科学的にも実証されてます

 かねてより、なぜミミズに小便をかけるとチンチンが腫れるといわれるのか不思議だった。迷信であるとは知っているが、言い伝えられているからにはそれなりの根拠があるはずだ。小さい頃から禁則のみを教えられて、その理由は聞かなかったため、以来十数年悩み続けていた。

 先日、ようやくこの疑問が解けた。中野宏『人はなぜ迷信が気になるのか』(河出夢新書)を読むと、「ミミズは田畑にとって大事な生き物であり、小便をかけたりするものではないという禁忌である」と書かれている。田畑の恵みを受ける人間にとっては、なるほどミミズは尊い生物なのであり、それを汚すことは許されないのだろう。それならそれで、ミミズを大事にしなさいといってくれればよいものを、なまじ「チンチンが腫れる」などというから、かえってミミズの社会的地位がおとしめられてしまうのだ、という気がしないでもないのだが、一応は理由づけがなされたので納得できた。

 ところで、この『人は~』を読んでいると、世の中には他にも様々な迷信・俗信があることが分かる。「お雛様は早くしまわないと、娘が縁遠くなる」「茶柱が立つと縁起がよい」など、我々のよく知っているものもいくつかある。しかし、多くは聞いたこともないものばかりで、世の中にはこんな迷信があったのかと驚かされるものが多い。

 たとえば、「人に砂をかけると、身体がグニャグニャになる」というのは初めて聞いたが、本当にこれが信じられている地域があるのだろうか。砂をかけたらグニャグニャになるのだったら、砂場で遊んでいる子供たちはもはや軟体動物のようになっているのであろうか。それとも、それを通り越して内臓がドロドロになっているのだろうか。外見上はそう見えないし、本人もそう気づいていないようであるが、実は子供たちはゼリーのようになっているのだろうか。身体がグニャグニャになるのだったら、やはり、バレリーナや新体操をする人々は、演技をするまえに砂をかぶったるするのだろうか。客席には「砂かぶり席」なども用意されているのだろうか。疑問は尽きない。

 「アリジゴクを枕に入れておけば、夫婦の仲が和合する」というのもある。私は妻帯者ではないのでよく分からないのだが、やはり寝る前に妻がアリジゴクを入れていたりすると、よし今日はやるぞ、という気分になるのであろうか。夫婦の仲が冷めてきたことを感じたら、アリジゴクをつかまえてくるのだろうか。それとも、世間一般の家庭ではアリジゴクを飼っていて、いざというときに備えているのだろうか。これまた、疑問が尽きない。少なくとも、私はアリジゴクを飼うような(ましてや、枕にいれるような)人とはお近づきになりたくないのだが。

 さらに、こんなものもある。「朝焼けと姑の笑い顔は油断するな」。これは、ある程度分かる気がする。解説すると、朝焼けは雨の前触れだから気をつけなければならないし、姑の笑い顔はいやがらせの前兆(かもしれない)から同様に気をつけるにこしたことはない、ということだ。一応、頭では納得できるのではあるが、なにも「朝焼け」と「姑の笑い顔」を結び付けなくてもよいのではないだろうか。なんだかオヤジ的センスがただよう迷信である。だいたい、相手に笑いかけて警戒されるのでは、姑の底意地が悪くなるのも当たり前である。

 迷信や俗信の類はこのようなものなのかもしれないが、解説なしで聞かされると納得できないものが多い。むろん、それなりの理由がそれぞれの迷信にはあるのだろうが、いまだに理由が解明されていないものも多いのである。初めて聞いた迷信の中で、まともに納得できるものは数えるほどしかない。一例を挙げると、

「便所に落ちると、出世しない」

 まったくそのとおりだと思う。