どこまでも行こう

 みなさんに、プラス思考のすばらしさを伝えたい。

 なにより精神衛生のためによいし、ものごとを前向きにとらえるのは建設的でもある。おまけに、無料でできる。決定された結果は変えられないが、結果に対するリアクションは自由なのだ。だったら、どんなことだって肯定的にとらえたほうがいい。

 たとえば、風邪をひいたときには、こんなふうに考えられる。

「風邪をひいたおかげで免疫がつくし、ゆっくり寝ていられるし、咳やくしゃみで腹筋が鍛えられるし、いいことずくめだ。」

 もっとも、プラス思考を実践するのは簡単ではない。思考を正の方向へコントロールするだけなら、誰だってできるし、正常な人間なら思考が前向きになるのは自然なことですらある。むしろ、思考が前のめりになりすぎるのを抑えることが難しいのだ。

「風邪をひいてしまった。しかし、これはただの風邪ではないだろう。今、私の身体は浄化されているのだ。宇宙存在であられるサタン様が私の意識側個脳意識を滾らせ、やがて、ドゥグ・ハル・ラ・バルのパワーが生命の樹を我が肉体に捧げようとしているのだ。そのとき、我が肉体は昇天華伏することで、神となる。そう、私は神となるのだ。愚民どもよ、ひれ伏せ。我が無限遠天の力に戦慄せよ。フハハハハッ……。」

 油断していると、ついついこんなことに考えてしまいがちである。だけど、こんなことばかり考えていると、日常生活にだいぶ支障をきたすようになる。友達は十人ぐらい減る上に、三人ぐらい増える。「視点が定まらない」「いつもクスクス笑っている」「ときどき顔がひきつる」などの諸症状があらわれるようになる。普通に会話しているつもりでも、無意識にサタン様の影が現れてしまう。思考の振幅が激しくなり、ふと我に返ったとき「こんなことで大丈夫だろうか」と不安に襲われることもある。

 でも、そんなときでもプラス思考で安心。