裁くのは俺だ

 セールス電話が馴れ馴れしくなってきている。

 もちろん、それはやつらの手口だ。事務的な口調であれば、こちらも事務的に応対することができるが、最初から馴れ馴れしい口調だと「知り合いかも」と思ってしまい、いきなり切ることができない。そうして切るタイミングを逃してしまうと、ずるずると会話するはめになる。

 先日かかってきた電話では、相手の男がいきなり元気な声であいさつしてきた。

「こんにちはっ!」

 幸い、私はこれが知り合いからの電話でないことにすぐ気付いた。私の知り合いなら、私に電話をかけるとき、こんなに元気でいられるはずがない。つまり、この電話はセールスマンの罠である。ここで相手に調子をあわせて明るく対応してしまうと、その後も無下に対応しにくくなり、相手のペースにひきずりこまれてしまう。こんなちゃちな手口に私がひっかかると思っているのだろうか。バカにするにもほどがある。私は反射的に「こんにちはっ!」と言ってしまったあと、そんなことを考えていた。バカにもほどがある。

 それにしても、やたら馴れ馴れしいセールス電話には閉口する。はじめのうちは「○○じゃないですか」と一応はですます口調なのだけれど、次第に馴れ馴れしさが増していき、「○○だよ~」「○○じゃない?」などと言いはじめる始末だ。このままでは「ごめん、ちょっとウンコしてくるから待ってて」などと言い出すのではないだろうか。いつから俺とお前はそんなツーカーの仲になったんだと言いたい。

 結局、対策としてはこちらが毅然とした態度をとるようにするしかないのだ。ツーと言われてカーと返すのでは相手が増長するばかりである。常に距離を保たなければならないのだ。

 ただ、そういうことは頭ではわかっていても、いざとなるとなかなか実践することは難しい。そのため、普段から訓練しておくことが必要である。たとえ親しい恋人が相手であっても、ツーといわれてカーと返すのではなく、ツーと言われてツーと返すぐらいの心がけでいたい。

「もしもし、私、大切な話があるんだけど…」
「ツー!」

 ツー…、ツー…、ツー…