デトロイト・メタル・ショウテン

 パンクにとって我慢ならないのが笑点の大喜利である。見ているだけで体がふやけてきそうなあの空間で、体制に組み込まれた薄汚い豚どもに対するやり場のない怒りをどうやってぶつけろというのだ。

 そもそも、座布団の枚数が増える程度の報酬で、人が真剣になれるとでも思っているのだろうか。いつから人間はそこまで達観したのか。かのマザー・テレサは言った。「人を恐怖と欲望によって支配することはできるが、座布団では無理」と。嘘だが。

 笑点は、もっと殺伐としていなければ、パンクと呼ばれるに値しない(ここで、「笑点は別にパンクを目指してないよ」とか、小賢しい突っ込みはするな)。そこで、提案する。舞台では、座布団の代わりに表面がギザギザになった石の台の上に回答者を正座させよう。そして、つまらない回答を言ったときは、正座した脚の上に重し(通称、THE BUTON)を載せることにしよう。

「おおい、山田くん。THE BUTON一枚やっとくれ」

 歌丸がそう呼びかけると、身長2m10cmの山田隆夫が重さ25kgのTHE BUTONを片手でぶらぶらさせながら、不気味な笑みを浮かべて舞台袖から登場する。

「はい、かしこまりました…」

 山田隆夫はくぐもった声で返事をし、回答者の脚の上にTHE BUTONを載せ、ついでにぐっと体重をかける。「……!」。声にならない悲鳴を上げる回答者を見て、山田隆夫は瞳の奥に捩れた愉悦を浮かべる。

 客席は、ただ息をのみ、大量の汗をたらしながら耐える回答者を見つめている。回答者の荒い息遣いを除き、会場は静まりかえっている。そんな中、歌丸が次のお題を告げる。

「さて、次のお題です。リストラされたばかりのサラリーマンが、連続強姦魔の冤罪をかけられ取調べ中に、思わず笑ってしまった一言とは? さあ、お答えください。ただし、ピカチュウ語で」

 鬼のようなお題を出す歌丸。絶望的な顔を浮かべる回答者たち。固唾を飲む観客。十数秒ほど沈黙が流れる。このまま回答が出なければ、全員に1枚づつTHE BUTONが載せられてしまう(そういうルールだ)。やがて、歌丸が残酷な笑みを浮かべつつ時間切れを告げようとしたとき、突然、会場の背後の扉が開いた。

「ちゃらーん、こん平でーす」

 こん平の登場に、凍り付いていた会場の空気が動き出す。一瞬、不意をつかれて目を見開いていた歌丸は、すぐに気をとりなおして突然の闖入者に怒声を浴びせようする。しかし、こん平はそれで鋭い目で制し、おごそかに告げた。

「みんな仲良くしよう」

 それで、みんな納得して輪になってマイムマイムを踊りました。おわり。