部屋のドアに続く長く果てない道

 引越しの挨拶を成功させるコツは、「この人にぜひ隣に住んでほしい」と相手に思わせることである。

 では、どのような人物が「ぜひ隣に住んでほしい」ような人物であるのかといえば、たとえば私のような一人暮しの男が挨拶に行く場合、まずは犯罪などには縁が無い人間であることを相手にアピールしておくことが大切だ。

「盗聴とか、絶対しませんから」

 このひとことで、相手の警戒心はずいぶんと緩くなる。もし、現在、隣人関係がうまくいっておらず悩んでいる人がいれば、自分がこのひとことを忘れていなかったか思い出してほしい。

 また、警戒心を解くだけではなく、好感度をあげていくことも重要である。自分がいざというときに頼りになるということをアピールしておけば、できるだけ仲良くしておこうと相手が思うのは当然の心理だ。

「エイッ! あっ、うっかり得意のカラテをやっちゃった」

 これだけでは野蛮な人だと思われるかもしれないので、嫌味にならない程度にインテリジェンスをアピールすることも忘れてはいけない。

「アレ? カラテって、なんだかパキスタン最大の都市でシンド州の州都のカラチに似てるね。フフ」

 もう期待感がとまらない。なんとすばらしい青年が引っ越してきたものだと、相手はすぐにでもウェルカムパーティーを開きそうな勢いだ。もし隣の先住者が妙齢の女性だったりすれば、もしかして恋の予感?

 現在、隣人関係がうまくいっていないという人も、今からでも遅くない。すぐに、隣の部屋のドアを叩いて、こう言えばバッチリだ。

「今まで無愛想で、会って挨拶もせず、夜中に突然お経を唱えたりしてごめん。俺、本当は気さくで話しやすいタイプだから、仲良くしよう」

 さあ、これで私が教えられることは全部教えたぞ。次は、君が私に人付き合いの仕方を教えてくれる番だ。