『愛少女ポリアンナ物語』から愛らしさが無くなったら

愛少女ポリアンナ物語
1986年1月5日~12月28日放映(全51話)

 「よかった探し」を抜きに、この作品は語れない。「よかった探し」とは、日頃から「よかった」と思えることを探し、いやなことや悲しいことがあっても落ち込みすぎないようにする生活の知恵のことである。主人公のポリアンナは4歳のときの母の死をきっかけによかった探しをするようになった。

 本編における記念すべき第1回目の「よかった」は、次のようなものである。

 外遊びから帰ってきたポリアンナは、父と食卓につく。食卓にはパンと牛乳しかのっておらず、ポリアンナは不平をいう。
「わたしいらない。ハムエッグがないんだったらわたし食べたくない」
 そんなわがままな態度を父は諭し、ポリアンナはすぐに反省する。
「ごめんなさい、おとうさん。このごろ火曜日にはいつもハムエッグが食べられたでしょ。だからわたし“今日も”って思ってたけど、今日だったら当たり前みたいでそんなにうれしくなかったかもしれないわね。きっと今度食べるときは今日の何倍もうれしいわ。よかった!」

 こんな調子で、ポリアンナは鈴のような声で、本編中に何十回と「よかった」を連発するのである。この作品を見終わったあとしばらくは「よかった」という単語を聞くたびに、ポリアンナの笑顔と四頭身の幼児体型が脳裏に浮かぶようになるほどである。


『愛少女ポリアンナ物語』6話 ポリアンナ(8)

 物語が進むと、ポリアンナにはさまざまな事件が訪れる。父の死(2話)や下半身不随になるほどの交通事故(21話)など、ハードな出来事に対しても「よかった」を探そうとするポリアンナの精神力はとても8歳児とは思えず、もしジョジョに登場していたら、さぞ強力なスタンド使いになっていたことだろう。

 ところで、この作品を見てから知ったのだが、心理学用語に「ポリアンナ症候群」というものがあるらしい。過度に楽観的であり、一見前向きだが実は問題点から目をそらしているだけというような症状のことをいう。

 アニメのポリアンナは幼いこともあってそのようにネガティブな印象を受けないのだが、大人になってからもこの調子では確かに困ることがあるかもしれない。仕事でミスをして「でも、おかげでこんなに課題が見つかったわ、よかった!」などと言われたら、上司はグーで殴りたくなるだろう。


『愛少女ポリアンナ物語』11話 よかったを見つけたポリアンナ

 そんなわけで、ポリアンナの将来を思うのであれば、「あまりよかった探しにのめりこむのをやめなさい」というべきなのかもしれない。しかし、ポリアンナにとって「よかった」はもはや口癖のようなもので、忠告されたからといって急にやめるのは難しい。そこで、「よかった」を少しだけ変えてみることにしてはどうか。

「ある意味よかった」

 つまり、最初のよかったはこんなふうになる。

「ごめんなさい、おとうさん。このごろ火曜日にはいつもハムエッグが食べられたでしょ。だからわたし“今日も”って思ってたけど、今日だったら当たり前みたいでそんなにうれしくなかったかもしれないわね。きっと今度食べるときは今日の何倍もうれしいわ。ある意味よかった!」

 思わずこぶしを握る父。