『赤毛のアン』 アン・シャーリーの全盛期とは

赤毛のアン
1979年1月7日~12月30日放映(全50話)

 原作の小説は有名だが、内容を知らない人に向けて簡単に説明すると、感情の振幅が常人の三倍ある女の子アン・シャーリーがマシンガントーク(というかマシンガンスピーク)をしまくる作品である。アンとその他のキャラクターのセリフ量を比べてみたら、9:1ぐらいになっているのではないか。

 アニメでもアンの長広舌は健在である。特に気に入ってるのが、アンが悲しみに暮れながら最後に余計なことをいって台無しにしてしまうセリフで、聞くたびに笑ってしまう。(アン本人は大まじめだが)

「お昼なんかほしくないわ。何にも食べられないの。胸がはりさけそうなのよ。あたしをこんな目に会わせて、いつか心から後悔することがあると思うわ、マリラ。でも、あたし、許してあげるわ。その時が来たら、あたしが許したことを忘れないでね。でも、お願いだから、何か食べろなんて言わないでちょうだい。特に豚肉や野菜の煮物は困るわ。悩みを抱いている者に豚肉や野菜の煮物はあんまりロマンチックじゃなさすぎるんだもの。」(12話)

「ああ、マリラ。あたしは永久に浮かばれないわ。今度のことはいつまでたっても消えないわ。みんなにも知れるし――アヴォンリーじゃ何でも必ず人にわかるようにできているんですもの。ダイアナはあたしにケーキの出来具合を聞くにきまってるし、そうすればほんとうのことを言わないわけにはいかないでしょう。これから先いつまでも痛み止めの塗り薬をケーキの香料に使ったんだって指さされることになるわ。ああ、マリラ、少しでもクリスチャンらしい憐みが残っていたら、こんなことのあとで、食器を洗えなんてこと言わないでちょうだい。」(22話)

 アニメと小説でセリフはほとんど変わらないのだが、アニメになることでより笑えるようになっている。アンの表情がくるくる変わったり、セリフに間を取ったりするのはアニメならではである。アンがしゃべっている横で、マリラが「何いってんだコイツ」という顔でアンを見つめていたりするのもいい。


『赤毛のアン』18話 アン・シャーリー

 ところで、アンは村の学校を卒業するあたりからどんどん成長して容姿も性格も変わっていく。アンのこども時代を懐かしんで嘆くマリラに対し、アンはこんなふうに答える。

「マリラ、あたしはちっとも変わってないわ。ただ少し鋏を入れたり、枝をのばしただけなんだわ。ほんとうのあたしは、そのうしろにいて――今までとまったく同じなのよ。」

 そうはいうが、こういうのは自分では何を失ったのかわからないものだろう。衝動的で、好き嫌いが激しく、ロックで、たびたびうっとうしいアンは消えてしまい、「正しい」アンになってしまう。あれほど「この娘が大きくなったらどうなるんだろう」と思わせてくれたアンなのに。

 大きくなって精神的にも物質的にもすっかり満ち足りてしまったアンは、牙をなくしてしまった。それは、アン本人もマリラも望んでいたことだろう。しかし、正しくなっていくことは正しいのかということを考えさせられる。大人の階段とは、実は下りなんじゃなかろうか。