『世界名作劇場』で最も不幸な主人公は

 『世界名作劇場』といえば、主人公が不幸なことに定評がある。では、最も不幸な主人公は誰だろうか。

 同じような境遇でも主人公の性格によって感じ方が違うので、誰が最も不幸なのかは一概に決められないのだが、いくつかの指標をもって点数をつけてみた。

 まず、一つ目の指標は“保護者の有無”である。世界名作劇場の主人公は、『トラップ一家物語』のマリア以外は未成年である。したがって、保護者の庇護を受けられるかどうかは、主人公の幸せに直結する。そこで、保護者の有無により、次のように配点した。

(1)家族がいる。ただちに生存の危機はない … +10点
(2)知人や雇い主などに面倒を見てもらえる … ±0点
(3)親身とはいえない誰かに食料をもらえる … -10点
(4)頼れる者はいない。働けなくなったら死 … -20点

 二つ目の指標は“住環境”である。名劇の主人公はお城のような家に住む者から野宿生活者まで、幅広い住環境を持っている。『小公子セディ』のセディのように20人以上の召使いに囲まれて生活する者もいれば、『母をたずねて三千里』のマルコのように故郷から遠く離れた土地で野宿を続ける者もいる。住環境については、次のように配点した。

(1)複数の召使いがいる屋敷 … +10点
(2)自分の部屋がある家や寮 … +5点
(3)少なくとも定住している … ±0点
(4)ボロ家、雑居、仮住まい … -5点
(5)野営しつつ生活している … -10点

 三つ目の指標は“物質的豊かさ”である。金銭的な余裕がなく、欲しいものひとつ買えない生活というのは、あまり幸せとはいえない。『フランダースの犬』のネロのように、画用紙すら買えない生活では、生きるために生きているとしかいえないだろう。そこで、物質的豊かさについては次のように配点した。

(1)生活に余裕がある。欲しいものは簡単に手に入る … +5点
(2)ふつうの生活。欲しいものはそれなりに手に入る … ±0点
(3)生活費に事欠く。欲しいものは我慢するしかない … -5点

 四つ目の指標は“健康”である。心身の健康は、その人の幸せを計るうえで重要な要素である。『愛少女ポリアンナ物語』のポリアンナのように超プラス思考の主人公でさえ、交通事故で大怪我をしたときは意気消沈してふさぎこんでいた。健康については、次のように配点した。

(1)普通 … ±0点
(2)軽いケガや病気 … -5点
(3)重いケガや病気。命の危険がある … -10点

 五つ目の指標は“教育”である。きちんとした教育は、主人公の将来の幸福に関わる重要な要素である。特に、名劇の主人公は一部の例外を除いて学ぶことに喜びを見出す者が多い。『トム・ソーヤーの冒険』のトムのような勉強嫌いでも、小さいうちから労働させられるよりは学校に行くほうがましだと考えるだろう。教育については、次のように配点した。

(1)学校に通っている(いた)。家庭教師がついている … +5点
(2)字が読める … ±0点
(3)字が読めない … -5点

 以上の点数に基礎点70点を合計したものを、幸福度と呼ぶことにする。

 なお、幸福度は最高で100点、最低で20点となる。各話ごとに点数をつけて、それを平均したものを、その主人公の幸福度とする。下のグラフで、顔アイコンのある点がその主人公の幸福度であり、あわせて作中における幸福度の幅(最大値~最小値)も示している。

 幸福度最高は、なんとなく予想がついていたが『小公子セディ』の主人公セディである。序盤で父の死とそれに伴う窮乏生活が描かれるが、14話で祖父の屋敷に引き取られてからは、優雅な生活を過ごす。物語の流れでピンチになることもあるが、とりたてて「悲惨」という感じはしない。


左『小公子セディ』14話 食事をするセディ
右『小公子セディ』26話 専属メイドとたわむれるセディ

 最も幸福度が低かったのは『家なき子レミ』のレミであった。実父を幼いころに亡くし、実母とは生き別れ。2話で養父の手によって人買いに売られ、旅芸人として生活することになる。だが、やさしい座長にも先立たれ、たどり着いたパリでは悪党に強制的に働かされ、最終話まで安定して不幸な境遇にあったことが、幸福度を下げる結果となった。


左『家なき子レミ』13話 座長に先立たれるレミ
右『家なき子レミ』15話 悪党に鞭を振るわれるレミ

 ちなみに、瞬間的に最も不幸なのは『フランダースの犬』の最終話のネロであった。終盤までは貧しいながらも、それなりに生活に満足していたが、生業としていた牛乳運搬の仕事を奪われ、祖父ジェハンを亡くし、家賃が払えなくなって家を追い出され、どうしようもなくなってしまった。ネロは作中で死を迎えた唯一の主人公である。

 また、幸・不幸の落差が最も大きいのは『ペリーヌ物語』のペリーヌであった。25話で両親を亡くしたペリーヌが、ほぼ一文無しで炎天下を徒歩でマロクールに向かうあたりが不幸のピークで、終盤に祖父と和解し従業員7000人の工場の跡取りとなったあたりが幸福のピークである。

 平均的な幸福度と、作中での境遇の変化を散布図にまとめると下図のようになる。なんとなくだが、各作品の傾向を知る手がかりになるだろうか。