アイスエイジセオリー

 中国の顔認証システムの記事を読んだ。なんでも、横断歩道の手前に顔認証システムが設置されており、信号無視をするとシステムが違反者を特定して、クレジットカードから罰金が自動で引き落とされるのだとか。

 公共の場所での顔認証システムというと監視社会とか個人統制とかネガティブなイメージがあるが、SFが好きな私としてはその進歩にちょっと期待してしまう部分もある。

 今は犯罪抑止とか捜査のために使われていることが多いようだが、このまま普及していけば他に色々なデータを取るようになるだろう。それがコンピュータに分析され、経済も政治もそのデータをもとに決定されるようになるのだろう。そのうち、より詳細に分析するためにどんどんくだらないデータが取られるようになるに違いない。
 
 ただし、そうやって集められたデータを対象が意識するとそれ自体が抑制因子になるため、対象にデータの内容を知らせることはない。ただ、対象の人生が終わりに近づいたころ、コンピュータが集めたデータについて教えてくれたりしたら面白いかもしれない。
 
 遠い未来、苦痛を取りさられ、ベッドに横たわり緩慢に死に向かう老人の枕元で、コンピュータがこれまで集計した彼の人生のデータを語り掛ける。

「あなたが今までに食べたバナナは513本です」
(ふーん、そんなに食べたんだなあ)

「あなたの生涯におけるジャンケンの戦績は1459勝1389敗です」
(へえ、けっこう勝ち越してるんだ)

「あなたを片思いしていた女性の数は3人です」
(マジか、まあもうどうでもいいけど…)

 あと、意外なことで世界上位になっていることを教えてくれたりする。

「あなたがペリーヌ物語49話を見返した回数は27回です。これは世界13位です」
(そっか、何回見ても泣けるんだよ、あの話…)

「あなたが左腕の力こぶを舐めて『んほぉ』と言った回数は1741回です。これは世界2位です」
(ふーん、1位のやつは何なの?)

 まあ、死にゆく者に対することなので、たいていは「ふーん」で済んでしまう。いよいよ意識が遠のいていく中、コンピュータは最後のデータを告げる。

「あなたが人生を生きた回数は1回です。これは世界同率2位です」
(ふーん…、えっ)