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順列都市 <ポジティブ書評>
感心するようなアイデアだ。コンピュータ上で思考する生命をつくりだすにはどうすればよいのか。この作品では、完璧な物理法則をシミュレートした世界と、人間の経験則をシミュレートした世界を用意する。しかも、そのふたつはストーリーが進むにつれてシンクロして、驚くべき相互作用を起こすのだが、全く想像の範囲を超えていた。それにしても、こんなふうにコンピュータの中でシミュレートされた人間を描く小説(「ループ」など)を読むと、読んでいる自分の存在もなんだか疑わしくなってしまうのは、私だけではないと思う。
アイデアはすごく面白いのに、そのアイデアを味わうべくストーリーがうまくかみあっていない。ちょっとしたロマンスがあったり、殺人者の苦悩がでてきたりすることを否定するつもりはないけれど、私は思いきり読み飛ばしていた。章立ても飲みこみにくいところがあるので、アイデアを楽しむ妨げになっている。 …7点 |
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命売ります <ポジティブ書評>
内容は、前後半で大きく分かれる。前半は明らかなB級小説。といっても、天然でB級小説を書いているような作家と違い、あえて軽薄な文体、内容を書こうとする作者の意図が感じられる。多少無理があるが。
いかにも「商業的作品」という感じがする。あまりにもわざとらしく、分かりやすく「大衆的」な文章、内容である。これが作者の矜持に起因するのか、単にそういう芸風なのかは知らない。ひょっとしたら、発表当時はこのような文章が一般的だったのかもしれない。 …6点 |
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帽子収集狂事件 <ポジティブ書評>
非常に硬めの「推理小説」で、読む人を選ぶ本である。きちんと、登場人物のタイムスケジュールや行動、言動をメモして、赤線をひきつつ真剣に読めば楽しむことができるだろう。要は、「推理小説」としての価値が高い、ということだ。一方で、それを怠って、漫然と読むような本ではない。偉そうなことをいっているが、私はそんなことをしていない。
最後まで読んでも、どこがこの殺人劇の肝になっているのか分からなかった。これは、文体や内容も関係するが、なんといっても私の読書能力の不足が最も大きい。 …4点 |
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奇跡の人 <ポジティブ書評>
ふところの深い小説である。交通事故から奇跡的に復活した人が、失った記憶をとりもどそうとする。粗筋だけなら、わりと派手かもしれないが、語られていることはいたって地味である。地味なだけに、ゆったりと内容にひたることができる。
残念なことに、主人公以外の扱いが非常にぞんざいである。はじめから脇役に生まれついた人はしょうがないかもしれないけど、主人公と過去の恋人を橋渡しする女性であるとか、その夫であるとかが、どう考えてもストーリーを進ませるためにだけの存在意義しかない。 …7点 |
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仕事くれ <ポジティブ書評>
基本的には「善の人間」と「悪の人間」しか存在しない世界での物語である。ストーリーも、つきつめれば善の人間がうまく立ち回って悪の人間の鼻をあかす、という単純なもの。主人公にアメリカンヒーローぽいところがあるので、今ひとつのめりこめないかもしれないが、現在失業中の人ならば身につまされて、もっと楽しく読めるだろう。
どこかで読んだような気分になる本である。「既視感」というのか、それともこういうときは「既読感」というのだろうか。 …5点 |
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氷点 <ポジティブ書評>
読者から見れば、登場人物たちの行動には理解しにくいところがある。しかし、では自分が渦中に放りこまれたらどう行動するだろうか、と考え込んでしまうような小説である。
ドラマティックである。良い意味ではなく、悪い意味で。 …6点 |
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図書館警察 <ポジティブ書評>
全体としては、さして面白いわけではないが、局所的に異常に面白い部分があったりする。子供たちの目からあふれだす恐怖心を吸いとるハエ女とか、白血病に倒れた少年に野球選手のサインボールを届ける話とか、そういうところである。
「図書館警察の正体見たり枯れ尾花」である。タイトルを見て、どんなキャラクタが現われるのか期待していたのに。本の返却が遅れたら、本を汚したら、落書きしたら、いったい図書館警察がどんな行動を起こすのか、非常にわくわくしていただけに、「なあんだ」という気分である。そういう細かい設定があったら、もっとずっと楽しめたろうに。 …5点 |
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地上50m/mの迎撃 <ポジティブ書評>
エンターテイメントの王道を歩く小説である。エンターテイメントとは何か忘れてしまったときには是非読もうと思う。軟弱な中間小説など吹き飛んでしまう内容だ。
とりあえず、映画化されたらつまらないものになるだろうな、とそれぐらいは予想できる。映画化されたくない小説といえば、内容がすばらしすぎて世界観を壊されたくないか、くだらないハリウッド映画になるのが目に見えているか、どちらかである。この本は、もちろん後者だ。 …4点 |
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T.R.Y. <ポジティブ書評>
実にクールだ。登場人物たちの底流には「プロのプライド」とでもいうべき意思が渾々と流れており、それが表面に現われてくるわけではないが、確実に感じられる。その絶えない流れが物語土台を形作っている。動的なストーリーでありながら、静的な印象を受ける作品である。
どんでんを返し過ぎだ。二転三転、そんなに転ばれたって、こっちはもう感覚が麻痺してしまって全然驚かない。やっぱりどんでん返しは「ここぞ!」というときに決めてもらわないと。 …6点 |
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キリンヤガ <ポジティブ書評>
決して魅力的な話ではない。主人公は頑固一徹瘋癲老人である。たいした起伏もなく、機械的に進んでいくストーリー。少なくとも、心を躍らせながら読む本ではない。しかし、そんなことがどうでもよくなるほど、清涼な小説なのである。
最後まで寓話的である。そして、寓話とはどこかしら教訓的なところが鼻につき、読んでいて楽しいものではない。この小説では、その教訓臭さが極めて薄まっているのだが、ラストシーンはさすがにちょっと気になる。どうにも、希望の持てないストーリー展開である。もちろん、この作者の技量ならば疑問符のまま物語を終えることもできただろう。それをしなかったのは、作者にとっては成功かもしれないが、読者にとってはどうだろう。 …7点 |