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 原発関連本をひろい読みしたものです。いくつかのテーマに分けて、できるだけ対立しそうな意見を並べました。長文のためいくつか省略をした文章がありますが、それらは「……」によって表しました。文章の意味や意見が変わってしまうような省略はしていないつもりですが、もしおかしなところがあればご指摘ください。また、本文中の赤字は引用者の手によるもので、「ここさえ読めばおよそのことは分かる」というところを赤くしています。参考にした本や文献に関しては、このページの最下部にまとめて掲載してあります。



チェルノブイリ事故について



 事故の影響により「被害者」として国に登録された人は、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの三か国で700万人にものぼり、さらに国連の報告を付け加えると、そのほか何らかの被害を受けた人の数は1000万人近くに達するといわれています。
 また、95年4月のウクライナ保健省の報告によれば、88年から94年までの7年間で、およそ125,000人以上の死亡が明らかになっています。すべての死者が事故の犠牲となって亡くなったとはいえませんが、汚染被害のひどかった地域ほど、目に見えて明らかに白血病やガンで命を落としている人の数が多いのです。
(だから原発は危ない!/p9)



「この間のテレビで、『チェルノブイリのその後』ってのを見たけど、現地の人はかわいそうよ。自分の体がだんだん放射線でやられていくんでしょ。なんでも死者は公式では31人といってるけど、もう300人位の人が死んでて、まだまだ増えるというわね。60万とか300万とかの人が毎年ガン検診受けなくちゃいけないし、そのうち0.5%から1%の人が、チェルノブイリの後遺症でガンになるって計算されてるみたいね。こわいわね。放射線ってのは」
「ちょっと待ってよ。もともと死亡原因がガンといわれる人は20%から25%あるんだよ。これに比べるとチェルノブイリの後遺症が原因でガンになる人が多いか少ないかは、人それぞれの感じ方じゃないかな
(アトミックおじさんの原子力談義/p52)



 今までのところ、チェルノブイリ事故に起因する健康影響に関する最も組織的な研究は、国際原子力機関(IAEA)によって1991年に行われたものです。……徹底的な研究が開始されてから1年後、そのグループは、放射線被曝に起因する直接的な健康障害はないという結論を下しました。……初期の予想に反して、得られたデータは、白血病やその他のがんの発生率の著しい増加を示すものではありませんでした。同時に、その研究論文の著者は、将来統計上検出できる程度に、甲状腺腫瘍の発生率が増加する可能性を認めるとともに、「がんや遺伝的影響の自然発生率を超える増加は、大規模でかつよく準備された長期的な疫学的研究をもってしても、はっきり確認することは容易でない」と結論しました。世界の最も優れた専門家によって示されたこの結論は、私達がマスメディアから聞き続けているものと極めて対照的です。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p108)



 国際原子力機関(IAEA)が1991年5月21日に発表したレポートの中で、チェルノブイリ事故の影響を評価して、たいしたことがないといっています。……ひどい結論です。事故を抹消したような結論で、唯一あるのは心理的な影響だと言うのです。
 調べられているのは、白ロシア、ロシア、ウクライナの三共和国が中心です。……私たちが厳しい汚染があったと考えている4分の1しか、IAEAは把握していません。
 ……調査データを見ると、データ自体におかしなことがたくさんあります。私がいちばんおかしいと思うのは、地表汚染と食品汚染の逆相関関係です。……これは明らかに、IAEAがあまり汚染されていないものだけを選りすぐってきて測ったとしか思えない。何か操作が行われていると思います。逆相関になるのは科学的に非常におかしなことですから。
 ……レポートを読むと、自分から症状を訴えて診てくれと言った人は最初から除外されているのです。というのは、自分から訴えるような人を調査すると、調査にかたよりが生じてランダムサンプルにならないから、という理由なのです。……しかし、自分から症状を訴えている人は、明らかに健康を冒されている可能性があるわけですから、この人たちを調査対象に入れない限り、健康調査をやること自体の意味がないに等しい。
(反原発出前します!!/p102)



 ベラルーシ共和国では、事故前には甲状腺ガンの自然発生は子供百万人当たり年間約1人であった。しかし、表に示すように、1994年にはこの国で子供百万人当たり36人の患者が出ている。そして最もヨウ素の被曝が多かったゴメリ地方では1994年には子供百万人当たり100人以上の患者が発生している。したがってゴメリ地方では、この年には子供の甲状腺ガン発生は自然発生率の100倍以上になったことになる。ベラルーシ共和国では36倍になる。
(原子力発電のはなし/p135)



 約40年間にわたり(最も汚染された用地を含む)多くの旧ソ連の核産業関連用地での放射線被曝を研究しているロシアの物理学者の意見に、私は衝撃を受けました。彼は、「あなた方は、私の結論が少し皮肉めいていると思われるかもしれませんが、私はチェルノブイリの事故が実際には多くの生命を救ったと考えています」と語ったのです。驚いたことに、彼は続けて、風下地域の医療に関心が払われたことの最大の利益は、個人の衛生に対して最も基礎的な医療さえも欠如し多くの若死者を出していた地域に、医療援助が行われたことだと指摘しました。大きな精神的打撃を与えた事故が、この基本的援助を行うために発生しなければならなかったことは、当然ながらとても不運なことですが、彼の指摘は確かに的を得ています。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p110)



 チェルノブイリ原発事故が旧ソ連の人々にもたらした被害は、どれほどのものであったか。その全体像を知ることは、10年がたった今日でも不可能である。国家財政に与えた影響を考えるだけでも、旧ソ連の三カ国、ロシア、ウクライナ、ベラルーシが、被災者への補償や、汚染された土地の復旧作業などに、依然として年間予算の15%(ウクライナの場合)もの財政支出を強いられていることから、事故の清算がいまだ途上にあり、損害の全体額を示せないことが理解できる(ちなみに86年から91年までにソ連が支出した金額は250億ルーブル=6兆720億円、ある学者は2000年までに経済全体で50兆円の損失と試算している)。
 ……しかし、あえてこの事故のもたらした被害の深刻さを実感しようとするのならば、事故直後に放出された放射能によって被曝し、その後もその放射能によって汚染された土地に住みつづけ、汚染された食料を食べ続けなければならない人々が、旧ソ連の三カ国だけで500万人に上ることを考えてみるとよい。この500万人とは、今日、旧ソ連の三カ国が「チェルノブイリ事故被災者の社会補償に関する法律」で、汚染地帯として認定し、なんらかの補償措置の対象とする、1平方キロメートル当たり、1キュリー以上のセシウム137に汚染された地域の上に住む人々の数である。そうした旧ソ連内の汚染地帯の総面積は13万平方キロメートル、実に日本の本州の57%に相当する。
(原発事故を問う/p230)



 チェルノブイリ事故では、厳重管理区域住民の被曝線量は、事故のあった年は平均23.2ミリシーベルトと非常に高いが、70年間で87ミリシーベルトと推定され、自然放射線による70年間の被曝線量77ミリシーベルトと同じ程度である。放射線による障害は障害に受ける線量によって決まるのでチェルノブイリ事故による厳重管理区域の住民の健康影響は自然放射線による健康影響とほぼ等しいものとなろう。
(原子力発電のはなし/p142)



安全性・リスクについて



 原子力のリスクの算定は試みてはいるようだが、なかなかむずかしい。未確認情報だが、原子力のリスクは、事故などによるものはそれほど高くなくて、ゲリラによるプルトニウムの奪取が大きいという話もある。現時点で原子力依存を増やすのは、リスクを増やしている可能性がないわけではない。30年以内に方針を決めるといった程度の取扱いでどうだろう。
(市民のための環境学入門/p128)



 一般産業や日常生活において、我々は不慮の事故に遭遇する機会が多い。不慮の事故によるリスクで、日本人は平均的に330日の寿命を失う。その主なものの内訳は、自動車事故で130日の寿命の短縮、労働災害で18日、火災事故で17日、鉄道事故で5日、自然災害で2日の寿命の短縮となる。
 ……一方、原子力発電所周辺に居住する人の寿命の短縮のリスクは0.2日と非常に低い。このリスクの低さは原子力発電所の設計、製作、建設、運転の現在の安全対策技術レベルの高さによるものであるが、今後も安全対策技術の向上を図り、原子力発電所の安全性を向上させることを期待するものである。
(原子力発電の話/p157)  



 原子力のリスクに関する詳細な研究は、原子力規制委員会(Nuclear Regulatory Commission : NRC)によって1970年代半ばに行われました。原子力産業界の中で、NRCは非常に保守的であると考えられています。彼らは、考えうるあらゆる事故の結果を分析する際、常に最悪のことを想定します。規制者として、そうした立場を取るのは一般に適切な姿勢といえるでしょう。損失寿命を算出する彼らの研究結果は、原子力産業によって平均的米国人が0.05日(約1時間)の損失寿命を強いられているというものでした。……米国には、原子力産業の欠陥のみに焦点を合わせる反原子力グループがいます。これらのグループの中で、「憂慮する科学者同盟」は、おそらく最も批判的で、遠慮なく意見を述べる集団です。……そのグループは、NRCの研究について厳しく疑問を投げかけ、そして真の健康影響はNRCの結果より約40倍高いと主張しました。これを基にすると、原子力による損失寿命の計算値は、約2日ということになります。 
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p162)



 専門家が危険としてランキングしたのは1位自動車、2位喫煙、3位飲酒、4位ハンドガン、5位外科手術であるが、婦人有権者組織の人々は、1位原子力発電、2位自動車、3位ハンドガン、4位喫煙、5位オートバイとしている。婦人有権者のメンバーがもっとも危険とした原子力発電は、専門家の投票では20位である。原子力発電についての評価が素人と専門家で最も差が大きい。大学生のグループも、原子力発電を最も危険度が高いと認識している。
(環境リスク論/p110)



放射線の危険度について



「自然放射線ってどんなものなの?」
「だいたい日本では、普通、人は年に1ミリシーベルトの放射線を受けてるの。世界では、たとえばインド・中国・ブラジルなど年50〜70ミリシーベルトくらい受けている人もたくさんいるんだ。それで、時間をかけてその地方で異常児が生まれる割合や、ガンで死ぬ人の割合を調べたけれど、他の地方と差がなかった。だから全然心配する必要がないってわかるでしょ」
(アトミックおじさんの原子力談義/p40)



 自然放射線と人工放射線では、生物への影響を考える場合、まったく話が違います。
 地球上には生命の誕生以前から自然放射線があり、長い進化の歴史のなかでこれを濃縮することのない生物が適応種として進化してきました。ところが、人工放射線に対してはまったく経験がありませんから、放射性のヨウ素もふつうのヨウ素と同じように体内に取りこんでしまいます。セシウムやストロンチウムもカルシウムなどの必須栄養素と間違えて筋肉や組織に濃縮してしまいます。体のなかの特定の部分が集中的に放射線を浴びることになるわけですから、ガンになる可能性がとても高くなってしまうことは誰にでもすぐわかります。
 自然放射線と比較して原発は安全だと言うのは、問題の本質をすりかえています。
(反原発出前します!!/p81)



 私達は、放射線によってがんを引き起こされた事例は実際にはほとんどないことを記憶しておく必要があります。事実、あらゆる電離放射線と関連性のあるがんは、全体の1%に満たないのです。一方、食生活や喫煙によるものは、約80%を占めます。白血病は、放射線によって引き起こされる可能性の最も高い種類のがんですが、放射線による白血病発生率は、全体の10%未満です。実際のところ、日常的に受けているレベルの低い放射線量では、放射線が誘発する白血病は本質的にゼロなのです。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p78)



 確率的障害というのは、ガンや遺伝的影響がその典型ですが、その障害の程度は被曝線量の多少には無関係に、その発生確率が線量に比例します。この説明にはよく宝くじの例が使われます。たとえ1ミリシーベルトでも被曝すれば、それはガンなどにかかる宝くじを買ったことになり、被曝線量の多少はガンの重い軽いには無関係で、被曝線量が少なければガンの当選率が低く、多ければ当選率が高いだけの違いです。……すなわち「被曝はゼロにこしたことはない」のであって、規制値にくらべて小さいからといって安心はできないのです。
(日本の原発は安全か/p28)



放射性廃棄物について



 疑いなく、放射性廃棄物の主な長所は、高レベル廃棄物の体積が非常に小さいことです。これは高レベル廃棄物が問題を引き起こさないという意味ではありません。実際には問題があります。しかしながら、私たちが扱わねばならない量が少ないこと、またそれが、あらゆる他の産業の廃棄物量より格段に少ないことを認識することは重要です。……今日の主要な電源である同等サイズの石炭プラントと比較すると、石炭プラントは原子力よりも重量で500万倍の廃棄物を生成します。……原子力への強い依存を仮定しても、生涯に蓄積する高レベル廃棄物の量は、高さ5インチ、直径2.5インチの果物ジュースの缶の中に納まる程度でしょう。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p123)



 私達が使用済燃料を再処理し、再利用のために未使用のウランや超ウラン元素を抽出・回収するならば、残りの高レベル廃棄物の放射能は約400年後に石炭飛散灰と同等以下になります。少なくとも1000年経過すれば、高レベル廃棄物はそのもともとの物質であるウラン鉱の毒性以下になります。……私達の関心が放射線にあるならば、元来地中に存在する自然放射能によるリスクは、巨大な原子力産業によってもたらされた高レベル廃棄物に比べ、少なくとも1000倍以上大きなものといえるでしょう。なお、この比較は何百万年もの間安定であることが知られている地層の中に埋めこまれた高レベル廃棄物が、注意深く密封された金属容器に保持されているのではなく、地中に均等に分散されるとの仮定に基づいています。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p125)



 放射性廃棄物のうち低レベルのものは海や川に流されていますし、微量の放射能は常に運転中の原発の排煙塔から大気中に排出されているのです。これらの放射能レベルは人体に影響を及ぼすほどのものではないとされていますが、じつは食物連鎖の解明などによって恐ろしい事実が判明しているのです。
 ……こうした食物連鎖によって動植物から検出される放射能濃度は、原子炉から排出された当初の何百倍、何千倍になるということが確認されているのです。そして放射能で汚染された食べ物は食卓へと上がり、私たちはそれを摂り入れて、内部被曝するのです。
(だから原発は危ない!/p114)



 そのうちで今一番有望なのは消滅処理とよばれる方法です。放射性廃棄物のうち半減期の長い、つまり長寿命の放射性核種を、特殊な原子炉で核反応を起こさせて、半減期の短い、つまり短寿命の核種に変えることによって、放射能を早く消滅させる方法です。そのためにはあらかじめ対象となる核種だけを、廃棄物中から取り出しておかなければなりません。「ある群だけを分ける」のですからこれを群分離といいます。この群分離と消滅処理の併用によって、事実上放射能をなくすことができるのです。専門家にききますとこの消滅処理法は現在原理的には何の問題も無く、ただコストの問題だけが残っているのだそうです。ただし群分離にあたっていったんガラス固化をしてしまうと、もう一度溶かして群分離するのが困難になるのであまり固化を急がずに、使用済燃料または高レベル廃液のままでの厳重管理か、再溶解可能な固化法の開発が望ましいとのことです。
(日本の原発は安全か/p59)



「100万本のドラム缶だって2キロメートル四方もあれば、十分埋められるさ。100年もたてば、人間にちっとも危険がなくなる。人間の社会生活から排出される化学的有害物質の方が、放射線廃棄物の25倍もあるって話もあるよ。人間の社会はそんなものでもなんとか受け入れているよ。原発の廃棄物だけ「目の敵」にするってちょっとおかしくない?
(アトミックおじさんの原子力談義/p142)



原発と炭酸ガスについて



 つまり、原子力発電は炭酸ガスを出さない。炭酸ガスは地球環境を悪化させる。だから原子力発電は環境にいい発電だ、とこういうことにすることで、傾きはじめた原子力産業をバックアップしようと考えたわけです。フランスにとって原子力産業は国家の命運を作用するような重要なプロジェクトになってしまっていますから、これが衰退するのは何としても防ぎたい。そこで出てきたのが、環境問題を利用して原子力発電の優位性をアピールしようとする戦略だったわけです。
 もともと原子力発電は、石油があと30年で枯渇すると騒がれた時に、その代替エネルギーとして登場してきたわけです。もちろん原子力では石油を代替できないわけですけど、そのことは別にしても、石油そのものがいっこうに枯渇しないばかりか、世界的にダブついて価格が下がってきた。だからもう、「石油が枯渇するから原子力が必要だ」という理屈が言えなくなってしまった。そのうえさらに、石油価格が下がって原子力発電のコストが相対的に高くなってしまったことと、原子力利用に予想以上のコストとリスクがかかることが明らかになってきて、原子力産業そのものが不況業種になってきてしまった。
 ……フランスはなんとかして原発をもういちど軌道に乗せたいとあせっているわけです。それで、一斉に炭酸ガス問題を言いはじめる、ということになるわけです。
(環境保護運動はどこが間違っているか/p116)



 フランスは1973年のオイルショックの際、原子力に対する国家の関与を公約することによって逆境に対応しました。フランス人は、1980年に20%であった国家の電力生産における原子力のシェアを、1987年には70%に増加させました。その間にフランスは、化石燃料プラントを原子力に置き換えることによって、二酸化炭素放出量を年間8200万トンから1300万トンにまで減少させることができたのです。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p194)



 原発は炭酸ガスの発生を伴わないというのも、原子炉内での核分裂反応だけの話だ。核燃料サイクルという迂回路とその間の輸送をふくめて考えれば、炭酸ガスの発生量が小さいとの説明は、かなり怪しい。
 原発の役割が強調されることで、省エネルギーに力を入れなくてよいかのような風潮がつくられてしまう点も大きな問題だろう。
(地球環境・読本/p90)



 こうして検証していくと、原発が二酸化炭素を出さないというのは真っ赤なウソだということがわかります。海水には二酸化炭素が溶けていますが、溶存できる二酸化炭素の量は温度が高くなるにしたがって少なくなるからです。
 つまり、原発で海水が温められることによって、海水に溶けていられなくなった二酸化炭素が大気中に放出されることになります。その量は、100万キロワットの原発を1日運転すれば、炭素換算でおよそ1000トンになるといわれています。
(だから原発は危ない!/p134)



プルトニウムについて



 1975年春のLafayette大学の講演で、ラルフ・ネイダーは、僅か1ポンド(453グラム)のプルトニウムが80億人もの人々を死に至らしめるだろうと述べ、この神話を導きました。……コーエン教授の計算によれば、1ポンドのプルトニウムが細かいほこりとして人間の肺内部で完全に分散されれば、理論的には200万人のがんを引き起こします。……プルトニウム毒性のはるかに重大な影響は、大気中での核実験による放射性降下物としてもたらされます。そのような核実験が1960年代に終結するまでに、少なくとも1万ポンドのプルトニウムが、細かいほこりとして地球大気に撒き散らされました。もしネイダー氏の考えに基づくならば、私達は全員、すでに何度も死んでいることでしょう。自然の地形や人口分布を考慮したコーエン教授の計算によるなら、この量のプルトニウムは世界中で約4000名の氏をもたらすのに充分です。……今までのところ、プルトニウムを扱う労働者を含め、世界のどの場所においても、プルトニウムが人間に死をもたらしたという事例はありません。
(衰退するアメリカ 原子力のジレンマに直面して/p203)



 前述したように、プルトニウムは体内に入ると実質的に排出されず、骨や肝臓に沈着してα線を放出し続け、周辺の組織を破壊します。また、微粒子を吸収した場合には肺ガンを誘発し、ひどいときにはわずか100万分の1グラムで死に至るともいわれています。さらに恐ろしいのは、半減期がとても長いことで、なかでもプルトニウム239のそれは、およそ24,000年といわれているのです。
(だから原発は危ない!/p80)



 α線は大きく、他の物質との相互作用の強い粒子なので、貫通力は弱く、たとえば空気中では数センチもあればとまってしまう。したがって、プルトニウム239などのα線を出す物質が体外にある場合、一般にはそれによる被曝はあまり問題にならない。
 ……ただし、いったん体内に入ったら、たいへんだ。体内の組織内では、たとえば骨中のプルトニウム239の飛程はわずか24マイクロメーター、ほかの一般の組織中でも40マイクロメーターほどしか走らずにとまってしまう。そのわずかな部分にα線のすべてのエネルギーが放出されるので、その電離作用は大きい。この電離作用は、がんや遺伝的障害の原因となりうる。
(プルトニウムの未来/p11)



 日本では84年にフランスからプルトニウムが輸送され、厳重警戒のもとに東京湾から東海村へトラックで運ばれました。さらに、98年の3月19日、8グラムのプルトニウムが東海村から千葉の放射線医学総合研究所へ納入されることになり、ほぼ100キロにわたる輸送がおこなわれました。このとき、搬送ルートはオープンにされたとはいうものの、事前に周辺住民への警告はされておらず、まったく情報を知らされていなかった自治体もあったほどです。
 ところで、この8グラムという量ですが、原子力資料情報室の調べによると、わずか1グラムが10万人の致死量にあたり、吸い込んだ人の100万人以上がガンになるというすごいものです。
 この8倍の量のプルトニウムを載せた車が、だれも知らない間に民家の間を走りぬけて行ったというわけです。
(だから原発は危ない!/p64)



 日本の再処理を止めさせることができれば、世界のプルトニウム産業は間違いなく崩壊します。しかも、プルトニウムを使うことのメリットはまったくないのです。経済的にもわりが悪いのです。プルトニウムを使うためには再処理をしなくてはなりませんが、再処理をするためには非常にコストがかかりますから、それに見合うようなメリットは何もないのです。危険性の問題を考えれば、さらにコストがかかることになります。
 さらに、輸送問題が加わってきますから、たいへんなことになります。ウラン輸送の問題ひとつとっても、事故や火災に巻き込まれたら、非常に広範囲に被害が及ぶことが計算上から言えます。ましてやプルトニウムにからんだ事故が起これば、日本のかなりの部分を失うことになるでしょう。
(反原発出前します!!/p220)



参考文献・資料



【タイトル】衰退するアメリカ原子力のジレンマに直面して
【作者】Alan E.Walter
【肩書】元米国原子力学会会長
【訳者】高木直行
【出版社】日刊工業新聞社
【発行年月日】1999年03月27日
【ISBN】4-526-04352-4



【タイトル】環境リスク論
【作者】中西準子
【肩書】横浜国立大学環境化学研究センター教授
【訳者】
【出版社】岩波書店
【発行年月日】1995年10月26日
【ISBN】4-00-002818-9



【タイトル】原子力発電のはなし
【作者】村主進
【肩書】原子炉安全基準専門部会部会長
【訳者】
【出版社】日刊工業新聞社
【発行年月日】1997年07月15日
【ISBN】4-526-04043-6



【タイトル】市民のための環境学入門
【作者】安井至
【肩書】東京大学国際・産学協同研究センター・センター長
【訳者】
【出版社】丸善ライブラリー
【発行年月日】1998年09月20日
【ISBN】4-621-0527604



【タイトル】原発事故を問う−チェルノブイリから、もんじゅへ−
【作者】七沢潔
【肩書】NHK教養番組部ディレクター
【訳者】
【出版社】岩波新書(赤440)
【発行年月日】1996年04月22日
【ISBN】4-00-430440-7



【タイトル】別冊宝島101 地球環境・読本
【作者】石井慎二(編集人)
【肩書】
【訳者】
【出版社】宝島社
【発行年月日】1989年10月25日
【ISBN】4-7966-9101-4



【タイトル】科学全書44 日本の原発は安全か
【作者】赤塚夏樹
【肩書】島根大学非常勤講師
【訳者】
【出版社】大月書店
【発行年月日】1992年08月28日
【ISBN】4-272-40154-8



【タイトル】プルトニウムの未来
【作者】高木仁三郎
【肩書】原子力資料情報室代表
【訳者】
【出版社】岩波新書(赤365)
【発行年月日】1994年12月20日
【ISBN】4-00-43035-6



【タイトル】だから原発は危ない!
【作者】田丸博文
【肩書】ワールド通信社代表取締役副社長アジア総局代表
【訳者】
【出版社】成星出版
【発行年月日】1998年07月23日
【ISBN】4-916008-61-8



【タイトル】アトミックおじさんの原子力談義
【作者】関義辰
【肩書】原子力委員会放射性廃棄物対策専門部会委員 核燃料管理学会日本支部理事
【訳者】
【出版社】星雲社
【発行年月日】1992年05月16日
【ISBN】4-7952-7517-3



【タイトル】反原発出前します!!●高木仁三郎講義録●
【作者】反原発で前のお店・編 高木仁三郎・監修
【肩書】原子力資料情報室代表
【訳者】
【出版社】七つ森書館
【発行年月日】1993年04月19日
【ISBN】0036-93111-9114



【タイトル】異議あり!−マスコミの「在り方」を問う−
【作者】二見喜章
【肩書】ノンフィクション作家 教育評論家
【訳者】
【出版社】ERC出版
【発行年月日】1998年06月30日
【ISBN】4-900622-12-5




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