ダジャレベル(笑)

 むかし読んだマンガで「発言内容のうち意味のある部分だけを抽出する機械」というものがでてきたことがあった。とある官僚の発言をその機械にかけてみると、「私は○○だと思いますが、△△という点も否定できないわけで…」と発言のなかで内容が打ち消しあい、結局、その人は言質をとられるようなことは何も言っていなかったとか。

 それとは少し話がずれるかもしれないが、発言というものには多少のオリジナリティが必要であって、誰でも言えるようなことなら何も言わないほうがましともいえる。かつてはオリジナリティの有無は話し手や聞き手の経験の範囲内でしか判断できなかったが、インターネットの普及にともない、キーワードを検索するだけでそれがどれぐらいオリジナリティがあるのかわかるようになった。前述の機械の機能が部分的にせよ実現できているわけだ。

 私の場合、ふと駄洒落を思いついたときなどに、それを検索してみたりする。その検索ヒット数を見て、その駄洒落が腐っているかどうかを判定するわけだが、では検索数が少ないほどオリジナリティがある優れた駄洒落であるかといえば、そんなこともない。そこで、ちょっと偉そうながら、私が検索ヒット数による駄洒落のレベル(略してダジャレベル(笑))の判定基準というものを考えてみた。

(※検索ヒット数は2008年5月21日現在、Googleにてフレーズ検索をした結果)

検索ヒット数:10,000~
レベル:ゲル
解説:一万年と二千年前から腐っています。その駄洒落を口にすることはセクハラまたは羞恥プレイの一部とみなされます。
・ そんなバナナ(そんなバカな) 176,000件
・ フラダンスの犬(フランダースの犬) 17,600件

検索ヒット数:1,000~10,000
レベル:部長
解説:大半の人が一度は聞いたことがあるレベルです。はやくまわりの愛想笑いに気づいて!
・ キャバクラ幕府(鎌倉幕府) 6,550件
・ 妹コントロール(リモートコントロール) 1,610件

検索ヒット数:100~1,000
レベル:ふつうです
解説:ちょっと新鮮な視点を感じつつ、老若男女に理解できる優れた駄洒落です。いいところを突いてきましたね。
・ マリファナ海溝(マリアナ海溝) 485件
・ 産婆カーニバル(サンバカーニバル) 332件

検索ヒット数:10~100
レベル:マニア向け
解説:正直、ちょっとキツイっす。まわりはどう反応していいのか分からないっす。思いついたことを何でも口にするのはやめてほしいっす。
・ パラライズ銀河(パラダイス銀河) 78件
・ のだめガンダーラ(のだめカンタービレ) 31件

検索ヒット数:0~10
レベル:もう二度と口にしません
解説:もう二度と口にしません
・ アヌスーピー(スヌーピー) 1件
・ 陰茎と快慶(運慶と快慶) 0件

部屋のドアに続く長く果てない道

 引越しの挨拶を成功させるコツは、「この人にぜひ隣に住んでほしい」と相手に思わせることである。

 では、どのような人物が「ぜひ隣に住んでほしい」ような人物であるのかといえば、たとえば私のような一人暮しの男が挨拶に行く場合、まずは犯罪などには縁が無い人間であることを相手にアピールしておくことが大切だ。

「盗聴とか、絶対しませんから」

 このひとことで、相手の警戒心はずいぶんと緩くなる。もし、現在、隣人関係がうまくいっておらず悩んでいる人がいれば、自分がこのひとことを忘れていなかったか思い出してほしい。

 また、警戒心を解くだけではなく、好感度をあげていくことも重要である。自分がいざというときに頼りになるということをアピールしておけば、できるだけ仲良くしておこうと相手が思うのは当然の心理だ。

「エイッ! あっ、うっかり得意のカラテをやっちゃった」

 これだけでは野蛮な人だと思われるかもしれないので、嫌味にならない程度にインテリジェンスをアピールすることも忘れてはいけない。

「アレ? カラテって、なんだかパキスタン最大の都市でシンド州の州都のカラチに似てるね。フフ」

 もう期待感がとまらない。なんとすばらしい青年が引っ越してきたものだと、相手はすぐにでもウェルカムパーティーを開きそうな勢いだ。もし隣の先住者が妙齢の女性だったりすれば、もしかして恋の予感?

 現在、隣人関係がうまくいっていないという人も、今からでも遅くない。すぐに、隣の部屋のドアを叩いて、こう言えばバッチリだ。

「今まで無愛想で、会って挨拶もせず、夜中に突然お経を唱えたりしてごめん。俺、本当は気さくで話しやすいタイプだから、仲良くしよう」

 さあ、これで私が教えられることは全部教えたぞ。次は、君が私に人付き合いの仕方を教えてくれる番だ。

100パーセントのヒーロー

 かつて、スパイダーマンは言った。

「ヒーローは孤独だ」

 私はヒーローじゃないが孤独だ。

 それはともかく、ヒーローとは、孤独であることにその本質がある。人を助けたら、名も告げずに立ち去るのがヒーローの流儀であって、助けるたびに「ねえ、俺のおかげで助かったよね? ね?」というようなヒーローは鬱陶しい。

 また、孤独であることには、利点も多い。ヒーローであることが周囲に知られてしまったら、普段から悪の組織に命を狙われたり、つまらないことで「お前、ヒーローなんだろ」と用事を言い付けられたり、「ヒーローさん」などというあだ名で呼ばれたりしかねない。

 つまり、ヒーローと孤独は決して切り離せないものであり、ヒーローを志すならば覚悟をしておくことだ。ヒーローを極めたヒーローともなれば、その孤独は想像を絶する。

・助けにいったら、露骨に嫌な顔をされた。
・悪人にも無視された。
・声をかけづらくて、そのまま帰った。

 もちろん、ヒーローが孤独に悩まないわけではない。ヒーローをやめたくなるときもある。だが、正義の味方としての使命感が、彼を突き動かす。やがて、ヒーローは苦悩を乗り越え、更なる高みを目指す。…それは、究極の孤独。

 ――すなわち、人類の滅亡。

デトロイト・メタル・ショウテン

 パンクにとって我慢ならないのが笑点の大喜利である。見ているだけで体がふやけてきそうなあの空間で、体制に組み込まれた薄汚い豚どもに対するやり場のない怒りをどうやってぶつけろというのだ。

 そもそも、座布団の枚数が増える程度の報酬で、人が真剣になれるとでも思っているのだろうか。いつから人間はそこまで達観したのか。かのマザー・テレサは言った。「人を恐怖と欲望によって支配することはできるが、座布団では無理」と。嘘だが。

 笑点は、もっと殺伐としていなければ、パンクと呼ばれるに値しない(ここで、「笑点は別にパンクを目指してないよ」とか、小賢しい突っ込みはするな)。そこで、提案する。舞台では、座布団の代わりに表面がギザギザになった石の台の上に回答者を正座させよう。そして、つまらない回答を言ったときは、正座した脚の上に重し(通称、THE BUTON)を載せることにしよう。

「おおい、山田くん。THE BUTON一枚やっとくれ」

 歌丸がそう呼びかけると、身長2m10cmの山田隆夫が重さ25kgのTHE BUTONを片手でぶらぶらさせながら、不気味な笑みを浮かべて舞台袖から登場する。

「はい、かしこまりました…」

 山田隆夫はくぐもった声で返事をし、回答者の脚の上にTHE BUTONを載せ、ついでにぐっと体重をかける。「……!」。声にならない悲鳴を上げる回答者を見て、山田隆夫は瞳の奥に捩れた愉悦を浮かべる。

 客席は、ただ息をのみ、大量の汗をたらしながら耐える回答者を見つめている。回答者の荒い息遣いを除き、会場は静まりかえっている。そんな中、歌丸が次のお題を告げる。

「さて、次のお題です。リストラされたばかりのサラリーマンが、連続強姦魔の冤罪をかけられ取調べ中に、思わず笑ってしまった一言とは? さあ、お答えください。ただし、ピカチュウ語で」

 鬼のようなお題を出す歌丸。絶望的な顔を浮かべる回答者たち。固唾を飲む観客。十数秒ほど沈黙が流れる。このまま回答が出なければ、全員に1枚づつTHE BUTONが載せられてしまう(そういうルールだ)。やがて、歌丸が残酷な笑みを浮かべつつ時間切れを告げようとしたとき、突然、会場の背後の扉が開いた。

「ちゃらーん、こん平でーす」

 こん平の登場に、凍り付いていた会場の空気が動き出す。一瞬、不意をつかれて目を見開いていた歌丸は、すぐに気をとりなおして突然の闖入者に怒声を浴びせようする。しかし、こん平はそれで鋭い目で制し、おごそかに告げた。

「みんな仲良くしよう」

 それで、みんな納得して輪になってマイムマイムを踊りました。おわり。

痛いの痛いの飛んでけ大空に

 とある病気にかかったのだが、それが激しく神経を刺激するので、痛みに弱い私は悶絶している。その様子を見た人が「そんなに痛いの?」と聞いてくるのだが、「痛み」とは、伝えるのがいかに困難なものであるかを実感した。

 思うに、痛みとは、それを経験していない人間には伝えることが不可能なものなのだ。ありきたりなたとえ話で「タンスの角に足指を――」とか「ツメの裏側に針を――」などといってみたり、あるいは、昔のジョークであったように「1cmの鼻毛を1Nの力で引き抜いたときの痛みを1hanageとして――」と痛みの定量化を試みたところで、決して伝わることはない。なぜなら、しょせん他人事だから、わざわざそれを想像してみたりはしないのだ。では、いかにすれば痛みを伝えることができるのか考えてみると、痛みとは「いかに痛くないか」を伝えることによってのみ、伝えることができるのだと思う。

 つまりは、こういうことだ。

「痛むの…?」
「ツッ…たいしたことは無い」

 ここで目を伏せ、グッと唇をかみ締め、身体を震わせながら言うことで、相手に「うわあ、痛そう」と思わせることができるのだ。自分が大丈夫であることを伝えることで、相手の主体的な想像力がはたらき、いかに痛いかを考えさせることができるのである。

 したがって、「どれくらい痛いのか」を伝えるために、あまり痛そうな様子を前面に出してはいけない。もっとも、本当に「痛くなさそうだな」と思われてしまっては元も子もないので、「痛みなどないように自然にふるまいつつ痛そうにする」という、やや複雑な表現力が必要となる。

・ 「ウヒョー! あの娘、ブラの線が透けて見えるぞ」と涙目で叫ぶ
・ 「フロントホック? フロントホック?」と二回尋ねながら、全身を痙攣させる
・ 「オレ、このまえ、はじめてブラの試着に行ったんだけどさあ」と世間話をしながら、のたうちまわる

 「どうだろう?」と訪れた友人に問うたところ、友人は少し考えたあと、「うん、あなたの痛さが伝わってくる」